第43章 -花園-(赤司征十郎)
〜現在〜
そうだ‼︎やっぱりあの時の…!
それにしても自分の記憶力の無さに
呆れてしまう。
父から”赤司征十郎”と
名前を聞いた時も、
あの時の人だと
まったく気付かなかった。
「きゃー♡」
「赤司様、こっち見てない♡?」
わたしがボーッと外を見ていると、
周りがザワザワし始めた。
「ね、赤司様、
檜原さんのほう見てない?」
「え⁈」
平岡さんのことばに
ハッとして彼を見ると、
すぐに彼と目が合った。
…ドキッ。
一瞬不敵な笑みを
もらしたかと思うと、
彼は一緒にいた人に何かを言い、
そのまま校舎のほうへ行ってしまった。
「は〜♡ステキだったね〜♡」
平岡さんはじめ、
クラスの女子は
ポーッと頬を赤らめていた。
やっぱりあの人だ…。
間違いない。
でも、ちょっと待って⁈
あの人がほんとに
わたしの婚約者になったの⁈
あの時の頬へのキスを思い出す。
思い通りにいかなかったわたしを
からかっているのだろうか。
誰が婚約者でも関係ない…
そう思って生きてきたのに、
胸の高鳴りがおさまらない。
前の婚約者に対しては、
まったく芽生えなかった感情…
この感情の正体が、
わたしにはまったくわからない。
でも、クラス中の女のコが
”赤司様♡”と目をハートにして
彼を見ているのは…
なんだかとてもイヤだった。