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〜Mint Candy Story〜

第43章 -花園-(赤司征十郎)


「謝ることはない。
それより、キミのピアノ…
素晴らしかったよ。」


「…‼︎ありがとうございます。」


ピアノのことを言われ、
張りつめていた自分の心が
少しだけ和らぐ。


「ピアノを弾いている時は、
別人のように素敵な表情だったよ。」


「…⁉︎…どういう意味ですか?」


「さっきも言った通りだよ。
最初に挨拶をした時のあの笑顔より
ピアノを弾いていた時や、
今の怒った表情のほうが素敵だ。」


「…⁈あの場では無理よ。
あそこではあの表情が必須なの!
あの表情を求められているの!」


思わぬ指摘に
わたしはまた言い返してしまった。


親だろうが婚約者だろうが、
何か言われても、
感情をおさえることなんて
とても簡単なことなのに、
さっきからこの人にだけは、
ポンポン本音を言ってしまう。


「…そうか。でも、オレは
求めていないと言ったら?」


…っ⁈


そう言った彼は、
ジッと力強い視線で
わたしを見つめてくる。


わたしはその視線を
外すことができない。


彼のその目力に
逆らうことができないのだ。





…ギュ。






「…っ⁈あ…あの…っ⁈」


彼の目力に動けないでいると、
突然彼に抱き締められる。


「ふふ…すまない。
さすがにそろそろ冷えてきた。」


「あ…あの!
コート、お返しします!」


わたしは慌てて離れようとしたけど、
彼はわたしをはなしてくれない。


それどころか
わたしを抱き締める彼の力は
どんどん強くなっていく。


わたしより大きいが、
男性としては小柄な彼のどこに
こんな力があるのだろう。


「いや…これで十分だ。
キミの温もりだけで…。」


彼はさらにギュッと
わたしを抱き締めると、
そっとわたしの頬にキスをした。


「ちょっ…⁈」


「ふふ…風邪をひかないようにな。
また会おう。すみれ。」


彼はそのまま行ってしまった。


わたしに妙な気持ちと
温かいコートだけを残して…。

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