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〜Mint Candy Story〜

第43章 -花園-(赤司征十郎)


でも、その胸の高鳴りも、
憧れのピアノを目の前にして、
だんだんと薄れていった。


わたしは婚約者や
家のことなんて忘れて、
無我夢中でピアノを弾いた。


大好きなピアノ…


ピアノさえ弾いていれば、
今日はもう誰とも話さなくて済む。




そう思っていたのに、
大好きなピアノの時間は、
あっという間に終わってしまった。


すぐに婚約者がわたしの元へ来たけど、
わたしはお手洗いに行くと告げ、
会場のメインルームから離れた。


今日の会場はホテルだったけど、
ココは中庭がキレイで有名だったので、
わたしはこっそり中庭に行くことにした。



でも…



「さっむーーい!」


中庭…つまり外…。
1月の夜はとてつもなく寒かった。


しかも、わたしは
ワンショルダーのドレスだけ…


けど、まだ戻りたくないし、
ライトアップされている
綺麗な中庭の中央にある
秘密の花園のような
お花で囲まれている場所が
気になっていた。



寒いけど…


寒いけど…



行こうっ!


わたしは自分の肩を抱きながら、
お花で囲まれている花園へ走った。




「うわぁぁ…」




そこはほんとに秘密の花園のようで、
絵本の世界みたいに綺麗。
花に囲まれ、
迷路のようになっている空間…
昼間は昼間で綺麗なんだろうけど、
夜は星空の中ライトに照らされ、
花が大きな星のようだった。


夜に見に来る人のためだろう。
小さなヒーターがいくつかおいてあり、
寒さはほんの少しだけマシになった。



「…クシュン‼︎」


でも、寒いものは寒い…。


少しだけ見たら、戻ろうかな…。




…カサッ




「誰⁈」


突然、誰かが草を踏む音がして、
わたしは振り返ったけど、
そこには誰もいない。


「キミはさっきの…!
”誰?”って失礼だな… 。
先客はオレのほうだったんだがな。」


「…っ⁈」


声のするほうに視線を戻す。
花園の迷路から出てきたのは、
さっきのあの人だった。


「す…すみません…。」


「何も謝ることはない。
それより、そんな格好で来るなんて、
いくらヒーターがあっても
無防備すぎるんじゃないかな。」


パサッ…


…っ⁈


その人は着ていたコートを
優しくわたしの肩に掛けてくれた。


「あ…あの…‼︎それじゃ、貴方が…」


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