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〜Mint Candy Story〜

第43章 -花園-(赤司征十郎)


「あぁ。お久しぶりです。
そちらの方は?」


「あ、紹介が遅れました。
檜原コンツェルンのお嬢様で、
私の婚約者です。」


…っ‼︎
婚約者はまたわたしの肩を抱き、
彼にわたしを紹介する。


肩に触れられ、
一瞬顔をしかめてしまうが、
もちろんそれを悟られてはいけない。


わたしもとびっきりの笑顔を作り、
挨拶をした。


「はじめまして。檜原すみれです。」


「どうも。赤司です。
では、今日あのピアノを弾くのは
貴女なんですね。」


そう!早くそのピアノを弾きたいの。


…って、なんで
そのことを知っているの?


「はい。わたしなんかが…
恐れ多いですが。」


わけがわからない。


でも、はやる気持ちをおさえ、
わたしは笑顔をキープして、
話を合わせる。


「すみれはコンクールでも、
毎回上位に入る実力を
持っているんですよ。」


わたしのことをろくに知らないはずの
婚約者が余計なことを言う。


「それは楽しみですね。
では、後ほど…」


彼はそう言って歩き出したが、
わたしの横を通り過ぎようとした時、
突然わたしの耳元で囁いた。


「そんな張り付けたような笑顔じゃ
すぐに剥がれてしまうよ。」


「…っ⁈」


今まで話していた人とは、
まったく別人のような冷たい声…


彼は何事もなかったように
去って行った。


「どうした?」


「いえ…。
それより、そろそろピアノを…」


「そうだったね。
今日のメインイベントだ。」


宣伝…していたのね。
だから、彼も知っていたのか…。


でも、そんなことより、
彼のあの豹変ぶりが頭から離れない。


たった今…初めて会っただけの人…
どんなにすごい家の人だって、
わたしには関係ないのに…




でも、あんなこと言うなんて…




いつ誰に会っても
冷静でいられたはずなのに…



感情を揺さぶられることなんて
なかったはずなのに…




わたしの心はドクンドクンと
いつもより大きな音を立てていた。


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