第43章 -花園-(赤司征十郎)
「お母様っ!このドレス…!」
パーティー当日、
パーティー開始時間は夜なのに、
朝っぱらからあれよあれよと
着せられてしまったわたしは、
派手なドレスを身に纏い、
思わず母の元へ走った。
「あら。よく似合ってるわよ。」
わたしが着ているのは、
淡いオレンジピンクのロングドレス…
ウエストラインから斜めにカットした
オーガンジー生地が
ふんわり重なっている。
「わたし、こんな派手な色…」
わたしが渋々参加する
パーティーで着るドレスは、
だいたいブルーで、
着たとしても淡い水色やグリーン…
赤やピンクなんて
可愛すぎて恥ずかしい。
しかも、ワンショルダーで、
胸元が大きく開いていて、
肩周りや鎖骨まで肌を晒している。
「すみれが決めたのよ?
今更何を言っているの!」
…。
ス○インウェイに興奮して、
上の空で返事をしていたことを
今更思い出した。
反論の余地はなく、
そのまま車に乗せられ、
会場へ連れて行かれてしまう。
「すみれ、久しぶりだね。
今日は一段と
ステキなドレスじゃないか。」
…っ⁈
会場へ着くなり、
馴れ馴れしくわたしの名前を呼ぶ
伊集院…えっと…
わたしの婚約者であるナントカさん。
よりにもよって、
いきなり肩を触ってきた。
「…そんな。」
「今日はすみれのために
ス○インウェイを用意したんだ。
キミのピアノを楽しみにしているよ。」
「は…い。あの…そのピアノは…?」
わたしは一刻も早く
この婚約者から離れたくて、
早く会場に行くよう、彼を促した。
お目当てのピアノは
会場のど真ん中にあった。
「うわぁぁ…」
わたしはすぐにでも
ピアノを弾きたかったのだが、
伊集院ナントカさんに連れ回され、
次から次へといろんな人へ
挨拶をさせられ、なかなか
ピアノに触れることができない。
「あ!すみれ!あっちへ行くぞ!
赤司家のご子息がいらっしゃる。
くれぐれも失礼のないように!」
アカシケ?
アカシケだろうが髪の毛だろうが、
挨拶するなら誰でも同じなのに。
「お久しぶりです。」
婚約者はとびっきりの笑顔を作り、
そのアカシケの
ご子息とやらに挨拶をした。