第42章 -電車-(青峰大輝)[後編]
-すみれside-
はぁ…負けちゃったかぁ…。
…悔しい。
「すみれ〜ごめんね!
わたしが足引っ張ったから…」
咲花がわたしに抱きついて、
半ベソをかいていた。
「咲花のどこが
足引っ張ってたのよ?」
わたしはまるで彼氏のように、
咲花を抱きとめ、頭をポンポンとした。
「すみれちゃん、すごかったぁ!」
「うんうん!ほんとありがとうっ!」
「すみれちゃんのおかげで、
渡り合えたよー。」
先輩たちも駆け寄ってきてくれ、
負けてはしまったけど、
皆笑顔で話し掛けてくれる。
「あ…ありが…」
「「「きゃーーーー♡♡♡」」」
な…なに⁈
突然の女のコの黄色い声に、
わたしたちはポカンとして、
何が起こったのかと、
周りをキョロキョロしてしまう。
「すみれっ!あれって…」
「…⁈青峰…くん…⁈」
咲花が興奮しながら、
指を指した先には…青峰くんがいた。
青峰くんは周りの歓声など、
意に介していないようで、
わたしの自意識過剰でなければ、
青峰くんはわたしに向かって
歩いてきている。
「よう。顔貸せ。」
え?カ…カツアゲ…?
失礼だけど…
大きくて目つきの悪い
青峰くんが言うと、
まるでカツアゲのような台詞…。
わたしがポカンとしていると、
青峰くんはわたしの手を掴んだ。
「えっ⁈あ!あの、まだ着替え…」
「あ♡どぉぞどぉぞ♡
すみれ、ごゆっくり〜♡」
「ちょっ⁈咲花⁈」
咲花のことばで、青峰くんは
わたしをグイグイ引っ張っていく。
「青峰くん⁈」
「っ⁈」
体育館を出る時、
ロングヘアのとても可愛い女のコが、
わたし以上に困惑した顔で、
青峰くんを呼び止めたけど、
青峰くんはそのコも無視して、
歩き続けた。
あのコはきっと…
青峰くんのファンとか…
そういうんじゃない…。
直感というか…女の勘…。
あのコはきっと…
「ねぇ‼︎今の…あ…青峰くん‼︎
待って!ドコに行くの⁈」
でも、青峰くんは返事をしてくれない。
青峰くんは校舎に入り、
どんどん階段を登っていく。
着いた先は屋上だった。