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〜Mint Candy Story〜

第41章 -海常-(黄瀬涼太)


「黄瀬ぇ‼︎おせぇぞ‼︎」


顔を洗って体育館に戻ると、
さっきすみれ先輩が持っていた
ケーキやお菓子が
いつのまにか置かれていた
テーブルにたくさん並べられていた。


皆にどつかれながら、
ケーキの正面に連れていかれる。


「黄瀬くん‼︎
お誕生日おめでとうっ‼︎」


満面の笑みでお祝いしてくれる
すみれ先輩…。


「ほら‼︎早く火消せって‼︎」


オレは、森山先輩に促され、
ケーキのローソクに
顔を近づけた。


「あ…頭…押さないっスよね?」


オレはそっと後ろを振り返る。


「わたしが作ったケーキに
そんなコトしないで‼︎」


すみれ先輩が、
ケーキをオレから遠ざけた。


「ははっ♪しないしない♪
ほら、早くしろってーー‼︎」


今度は小堀先輩に促され、
オレはやっと
ローソクの火を消した。


「「「おめでとぉっ‼︎」」」


今日何度目だろう?


扉を開けた瞬間…
パイを投げつけられた瞬間…
そして、今…




こんなに嬉しい”おめでとう”は、
人生初かもしれない。


新・三大オレのキライな日から、
誕生日…外そうかな。





「はい!黄瀬くんは、
チョコプレートのところね♪」


すみれ先輩がケーキを切ってくれ、
オレに手渡してくれた。


「ありがとっス‼︎」


「どういたしまして。」


ニッコリ笑顔で答えてくれた
すみれ先輩は、
他の皆にも
ケーキを配りに行ってしまった。


オレはその様子を遠目に見ながら、
ケーキを一口食べた。


「甘っ!」


「文句言うなよ。
すみれは甘党なんだよっ。」


いつのまにか、
隣に笠松先輩がいた。


「文句なんて言ってないっスよ!
美味しいっス!」


別にマズイわけではない。
ただほんとに甘いケーキだった。


「そうか…。今日の…コレ…
すみれが言い出しっぺなんだよ…」


「…っ⁈」


突然の笠松先輩のことばに
オレは思わず笠松先輩のほうを見た。


「先週くらいから、
オマエのファンの連中が
誕生日の話してたろ?
でも、オマエがちっとも
嬉しそうじゃない…ってな。」


「え…⁉︎」


笠松先輩は、
少し離れたところで
ケーキを皆に配っている
すみれ先輩を
愛おしそうに眺めながら言った。


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