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陰陽師と半人魚

第1章 プロローグ


暗い夜空に浮かぶ満月は周りを明るく照らす。

その日は、やけに雲が多くて月は隠れていた。

「・・・あ、あああ、あぁぁぁあ!!」

悲鳴がした。
その途端、亜弥は【人としての理性】が蘇った。

「・・・?」

やけに鉄臭い。口や手が濡れている。
タオルが欲しい。

辺りを見回すと尻餅をついている女性がいた。

タオルが欲しい。そう言おうとしたが何故か上手く喋れず、手振り身ぶりで伝えようとした。

が、

「く、来るな、化け物!!」

式神が飛ばされた。
攻撃力を強く持つ式神だった。

「・・・え?」
「この、化け物!!」

拒絶の言葉をぶつけられた瞬間、見えた。
彼女がどのような目をしているのか。
彼女は、拒絶や憎悪、様々な負の感情を含んだ目をしていた。

頭が真っ白になった。
生まれて初めて、他人からそのような感情をぶつけられたのだ。
まだ十にもなってないのだから当たり前だろう。

思考停止したせいか、五感が鋭くなったのだろうか。
後ろから息絶え絶えの音がした。

勢いよく後ろを振り向いたときだった。

月が雲から出て、彼女を、全てを照らし出した。

そして、全てがわかった。
濡れた手や口はなんなのか。
上手く喋れない原因が。
何故このような感情をぶつけられたのか。
後ろから聞こえる音はなんなのかが。

そこでそれは消えた。
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