第2章 芍薬の蜜/銀時
「うわっ‼︎」
投げ飛ばすようにして手を離すと、坂田の身体はボックス席の長椅子にドサリと収まった。
一番奥の席はVIP用に作られた代物なので薄いカーテンで仕切られている。
これなら天パと土方さんが衝突する事もないだろう。
『………』
私は無言で向かい側に腰を下ろした。
思いを寄せる彼とのひと時を邪魔されて、怒りのボルテージは最高潮だ。
「何怒ってんだよ」
坂田の怪訝そうな声。
答えるのも面倒臭い。
目の前にいる客を無視して煙草に火を付けると、カーテンを割って店長が顔を覗かせた。
「よっ万事屋の旦那」
「おー店長じゃねェか」
どうよ、儲かってる?
そりゃもうお陰様で。
おっさん二人の世間話はその後しばらく続き、気付いた時にはVIP席が高級酒で埋め尽くされていた。