第2章 芍薬の蜜/銀時
どうやって奴を追い返すか必死に考えを巡らせていると、鼻に掛かったような独特の声が飛んできた。
「よう、大串くんじゃねェか」
奇遇だな。
坂田は言いながら手を上げる。
「げ……万事屋」
最悪な鉢合わせ。
青ざめる店内。
この二人が水と油なのは周知の事実だったし、以前にも店で乱闘騒ぎを起こした事があった。
「何でテメェがに酌してもらってんだコラ」
「あ?酒なんざ注いでもらってねェよ」
まさに一触即発。
坂田はあらぬ勘違いをしているようだし、このままではまた乱闘が起きかねない。
私は使えないボーイを一睨みしてから仕方なく席を立った。
『銀さんいらっしゃい』
久しぶりね。
とか、なんとか。
適当なことを言いつつ坂田の腕を掴んで店の一番奥へと引き摺っていく。