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蒼き昊をみすえ

第1章 プロローグ


 戦いの中にも静かな時間を過ごすことの出来たそんな時代。隠れ里のように、しかし世間からは寺院として知られるようなそんな場所に、その子ども達は集められていたのでした。
 子ども達には親はいませんでした。戦により死んでしまったもの、貧困により子どもを捨てるしかなかったもの、そしてお金のために子どもを売ったもの。
 理由はそれぞれにあり、誰もそのことを咎められるものはいなかったのでした。その子たちにとってもそんなことは、関係ありませんでした。ただ、自分達には親という存在がいないだけであると思っていたのでした。そのかわりに自分達には師匠たちがいるということも理解していたのです。
 子ども達には、たくさんの鍛錬が用意されていました。生きていくための食料の調達から畑仕事、洗濯や調理などといったことは自分達で出来るようにと教えられていました。そして、怪我をしたときの治療や病の治療などに対しての知識も多くあったのでした。
 学問は、その時代の一般の子ども達より数段多く、高貴な貴族の子ども達に負けず劣らずというくらいの勉強量があったのでした。
 そして、子ども達には、一般教養以外で『生き残る』ためにしなければならないことがありました。それは『殺人術』
 多くの子ども達は、産まれてすぐこの寺院に預けられ、おもちゃの一つとして武具を与えられていました。そして、本格的な修行が始まるのは、数えで四の年のことでした。
 何の迷いもなく、その修行に子ども達は取り組みました。そうでなければ、殺されてしまうのですから、身体は自然と動くのでした。そこにいることで常に身体は敏感に反応するようになっていったのでした。
 その寺院は『蒼桜院(そうおういん)』といわれ。空に近い、高い山の上にあり、春になると綺麗な山桜が山を覆うくらい咲き誇ることからそういわれていました。
 何者をも近づけさせない厳格のある雰囲気は、高貴な貴族たちがたまに訪れるくらいでほとんど来客というのはありませんでした。そんな閉鎖的な環境の中で、子ども達はただ生き延びるために修行を続けるのでした。仲間と共に・・・
 たくさんの仲間、兄弟のように近い存在の彼らとの生活は子ども達には楽しいものでもありました。しかし、辛い試練のときはやってくるのでした。
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