第5章 さらば、もう一人の友よ
そう、アギトは男になったのだ。
声は低くなり身長も伸びて、ふくよかだった胸は真っ平になっている。
『エリュシアンが"性転換魔法"っつーのをかけてくれたおかげだな』
"性転換魔法"…それはアースランドのアギトがミスコンに参加した時に自分にかけた、性別を変化させる魔法だ。
ジェラールと別れてもう一体思念体を作ったのは、アギトとヴィアンのところに向かう為だった。
「しかしこの世界の魔力はなくなったのに何故女に戻らないのだ?」
『魔法をかける瞬間だけ魔力が必要なんだってさ
なんでも身体のホルモンバランス事態を変更させたとか何とかかんとか…俺にはわからん
とにかく変化させる間だけ魔力が必要で、もう一度その魔法をかけてもらわねぇと女に戻らねぇんだってさ
ま、戻る気はねぇけどな!』
"生まれ変わる"ではないが、念願の"男になる"事は叶ったアギトは上機嫌だった。
「そして無事、手術も成功しましたしね」
そう言ってヴィアンがジェラールに渡したのは一枚の報告書。
「性転換をする前にお姉様の子宮を取り除きました
今現在私が預かってますので安心してください」
『男になったのに俺のってのが何か違和感…』
「子宮を取り除いてから魔法をかけてもらったので当たり前でしょう」
エドラスのアギトが戦いに参加しなかったのがこの手術の為だった。
「お姉様の子宮は特殊なホルマリンの中に漬けているのでまだ生きております
排卵し、お姉様の卵子を摘出されれば王の精子を頂戴し、人工授精に成功すれば…
お二人のお子様がお生まれになるでしょう」
これがアースランドのアギトの作戦であり、ジェラールへの恩返しだった。
幸いエドラスはアースランドよりも医学がだいぶ進歩していたのでそれが可能だったのだ。