第5章 さらば、もう一人の友よ
とても長かった夜が明けた。
ジェラールはただの飾りと化した杖を握り締めた。
そして群衆の視線を一身に浴びながら倒壊して出来た瓦礫の山へとゆっくりと登って行く。
優しく髪を撫でる様な風に一度目を伏せ、そして開く。
ジェラールはバッと背後を振り返り、期待の目を向けてくる群衆へと手に持った杖を高く翳した。
「魔王エリュシアンはこの私が倒したぞ!
魔力などなくとも…我々は生きていける!!」
刹那、「おおぉぉー!!」と上がる大歓声。
強大な悪からエドラスを守り抜いた、偉大なる英雄が今この時誕生したのだ。
「……」
群衆を見つめる彼の目には揺るがぬ強い意志が宿っていた。
その奥底には大切な事を教えてくれた妖精達が常にいる。
そして、最愛の友がいる。