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闇の滅竜魔導士と盗魔眼

第5章 さらば、もう一人の友よ


「王子が勝ったぞー!!」
「やったー!」
「スゲー!」
「王子ー!」
「素敵ー!」


直後、王都に湧き上がる大歓声。
それを背に、ジェラールは倒れてもなお清々しい笑み浮かべるアギトを瞳を揺らして見つめる。


…と、突然アギトの体がカァァ…と淡い光を帯び始めた。


「! お前…体が…」

『忘れたのか? 逆展開されたアニマは全ての魔力をエドラスから消し去る
 つまり体内に魔力を持つアースランドの魔導士も流されるんだぜ』

「!」

「始まった」

「さーてハデに苦しんでやるか」


そしてアースランドの魔導士達の体は宙に浮いていった。


「ぐわあぁぁ!」

「きゃあああ!」

「うあぁああ!」

『お前等面白すぎ…くくっ』

「(ま…まさか人間までも吸い込むとは…想定外だ…)」


唖然と空を見上げるジェラールの前でナツやウェンディ、ガジルは喉に手を当て、如何にも苦しげな声を上げてアニマへと吸い込まれて行く。


「うおぉ! 魔王が空に吸い込まれて行く!」
「王子が私達を救ってくれたぁー!」
「王子!」
「王子万歳ー!」

『(…良かった、これで安心だ)』


湧き上がる大歓声をアギトは嬉しそうに見下ろした。
そしてジェラールは空を行く大きな影を見つけた。
その影の正体は腕を組み、優しげな笑みを浮かべた…


「、リリー…」


目が合い、言葉を交わさずとも伝わって来る強い言葉。


(王子、変化に素早く順応する必要なんてありません
もっと、ゆっくりで良いのです
歩く様な速さでも、人はその一歩を踏み出せる

未来へと、向かって行けるのです)


「あぁ…」


別れが寂しくないワケではない。
しかしジェラールの瞳に迷いまもう微塵もなかった。




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