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闇の滅竜魔導士と盗魔眼

第5章 さらば、もう一人の友よ


攻防の末、二人はお互い手を掴んで押し合いになっていた。
ギリギリと押し合う二人。



…と、近距離だからこそジェラールにだけ聞こえる声でアギトが有る事を口にした。





『…お前は俺を"帰るべき場所"に帰してくれた』

「…!」

『だから俺も、お前の"いるべき場所"に帰す』

「アギ…」

『そしてこれは…俺流の、妖精の尻尾式壮行会だ!!』

「がっ!」


アギトはジェラールに頭突きを食らわせた。
それでフラつくジェラールに回し蹴りを繰り出すが、ジェラールはそれを躱した。



『妖精の尻尾を抜ける者には三つの掟を伝えなきゃならねぇ

 一つ! 妖精の尻尾の不利益になる情報は生涯他言してはならない!』



唖然としているジェラールに何発もの拳を繰り出すアギト。
ジェラールもその言葉を聞きつつ、放たれた拳を受け止め、自身も拳や蹴りを打ち放ってアギトに応じる。



『二つ! さぁ何でしょう?』


「っ、過去の依頼者に濫りに接触し、個人的な利益を生んではならない!」


『せーかい! 三つ!


 たとえ道は違えど、強く力の限り生きなければならない

 決して自らの命を小さなものとして見てはならない』


「、…愛した友の事を」



ギュッと拳を握り、嬉しそうに口角を上げる二人。





『「生涯忘れてはならない!!」』





ガンッと鈍い音を立て、同時に両者の頬に減り込む互いの拳。

二人を中心に、辺りはシンと静まり返る。



『…届いたか、?』

「…、…」

『ギルドの精神があれば出来ねぇ事なんかねぇ!』


ぐらりと後ろに揺らぐ二人の体。


…先に地に倒れたのは魔装を解き、清々しい笑みを浮かべたアギト。


反対にジェラールは地を踏みしめ、地に倒れる事を阻んだ。





『また会えると良いな、ミストガン!』


「アギト、…」



もう会えないかもしれない、"また"なんて来ないかもしれない。
しかし、アギトは敢えて"また"と言った。
そして滅多に呼ばないアースランドでの名前を呼んだのだ。




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