第5章 さらば、もう一人の友よ
その様子に息を呑む二人。
目に飛び込んで来たのは無残にも破壊された建物。
鼓膜を揺らすのはドォンッという破壊音。
「暴徒の数は?」
「四人です」
「たった四人だと…!? 何故取り押さえん…!?」
「そ…それが物凄く強くて…」
『ガーッハッハッハッハッハ!!』
「「、!?」」
兵隊の言葉を遮って上がった高らかな笑い声にバッと王都の方を振り返る二人。
混乱に泣き叫んでいた人々は皆一様に上を見上げ、唖然としている。
そして驚きに目を見開くジェラールとリリー。
その目に映っているのは、銀色の頭からニョキと生えた禍々しい角に、風に靡き揺れる黒いマント。
『我が名は大魔王エリュシアン!!
この世界の魔力は俺様が頂いたぁああ!!』
「な、!」
「アギト…!?」
…そう、それは紛れもない、アースランドのアギトであった。
「ひいいい」
「た…助けてくれ~」
「うわーん」
「わあー」
アギトは自身の眼下に集まった人々のどよめきを見下し、更に告げた。
『貴様らの王はこの俺様が仕留めた!
特別に命だけは助けてやったがなぁ? ハーッハッハッハ!!」
アギトが指をパチンッと鳴らすと、怯える群衆に追い打ちをかけるものを見せた。
固く体を拘束され、磔にされたエドラス王 ファウストの姿があった。
「陛下ー!」
「いやー!」
「王様が~」
「何て酷い事を…」
『ハハハハーッ! ドラグニル! レッドフォックス! マーベル!
我が下僕達よ! 街を破壊せよ!!』
悲痛な声にアギトはニィと凶悪な笑みを浮かべ、控えていたナツとガジルとウェンディに命令を下す。
「ファイヤー!!」
「何だアイツは!?」
「口から炎を!」
「逃げろー!」
「ギヒヒヒ!」
「今度は何だ!?」
「腕が剣になってる!」
「街がーっ!」
アギトにも負け劣らぬ凶悪な笑みを浮かべたナツとガジルは滅竜魔法で次々に街の建物を破壊していく。
「何をしているんだ…! よさないか!」
予想外で信じ難い光景に唖然としていたジェラールだが、やっとハッと我に返り、声を張ってアギト達へ制止を叫ぶ。
しかし、届いていないのか、将又無視をしているのか、アギト達は街の破壊をやめようとしない。