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闇の滅竜魔導士と盗魔眼

第5章 さらば、もう一人の友よ


伏し目がちの顔に薄らと見え隠れする迷いの色…。


「滅亡させたのが貴方なら貴方がその責任を取りなさい!
 それは死ぬ事ではない! 再びこの世界を導き、生きる事だ!」

「…それでは民の混乱は鎮まらん、…」

「…俺が悪役になりましょう」

「!?」


バッと顔を上げたジェラールの顔は滑稽な程に驚愕に染まっていた。


「俺はエクスタリアを追放され、人間と共に歩んで来た
 しかし今回の件で王国を裏切った
 もう俺に帰る場所はない…全ての悪となり、処刑される役は俺が…」

「ならん!!」


静かな部屋に木霊するジェラールの声。
それは切羽詰まり、僅かな怒りを含んでいる。


「君は私の恩人だ! 死ぬ事は許さない…君は幸せにならなければならない!」

「…ではその言葉、そっくり王子に返しましょう」

「、!」

「アースランドのアギトは、貴方の事を恩人だと言ってました
 ならば貴方だって幸せにならなければならない資格があるでしょう」

「っ…」

「わかったでしょう 誰かが責任を取って死ぬなど…不幸しか呼ばぬのです」

「…ではどうやってこの混乱を鎮めれば…」


ギュッと拳を握り締め、「愚策だったか…」と唇を噛むジェラール。


私には、この世界を救う事は…





「パンサー・リリー様! 大変です!」

「、」

「…」


突如背後から聞こえて来た、床を蹴る音と焦りを含んだ兵隊の声。
しかし、リリーとジェラールは魔力の事だろうと思い、落ち着いた態度で応える。


「…わかっている アニマの件なら見ての通り我々が…」

「止めようとなさっているのですね!」

「いや…そうじゃない」


勘違いをしている兵隊の言葉を訂正しようとするリリーだが、それよりも早く兵隊が言葉を紡いだ。


「それより城下で暴れている者達が…街を次々と破壊して…」

「…予想以上に酷い混乱のようだな 早く何とかしなくては…」

「今は暴徒を止めるのが先です」

「…そうだな、これ以上広がる前に手を打とう」

「あの…そちらの方は…?」


恐る恐るそう尋ねる兵隊だが、二人は何も答えずにその場を去る。
そして駆け足で辺りを一望できる回廊へと移動し、手すりから身を乗り出して王都を見下ろした。




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