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闇の滅竜魔導士と盗魔眼

第5章 さらば、もう一人の友よ


夢だ、悪夢だと疑いたくなる現実をジェラールは告げた。
そんなリリーを説得するようにジェラールは語り続ける。


「混乱している国民の前で、この混乱を引き起こした私を処刑するのだ
 王国軍の一人として…エクシードの一人として
 混乱を鎮め、皆を導け
 魔法のない新たな世界…新たな世界の王となるのだ」

「貴方は本気でそんな戯言を言っておられるのか!? 王子!!」

「その覚悟がなければこんな事はしない
 これはどちらのアギトも知っている事だ」

「っ!?」


エドラスのアギトとはリリーも顔を合わせている。
ジェラールの命を救ったリリーを自分の事の様に感謝し、いつもジェラールの事を第一に想っている事をリリーは知っていた。

そして今日会ったばかりのアースランドのアギト。
ジェラールに相当信頼されており、アギトの方もジェラールを大切に想っているのが十分伝わった。

そんな彼らがこの作戦に賛成した事が信じられなかった。
特にアースランドのアギトはジェラールの作戦に協力したと言う事になる。

彼らも覚悟をしているのか…と一瞬迷いを見せたが、すぐに拳を握って再びジェラールに食って掛かる。


「断る! 何で俺が王子を…出来るワケがない!」

「君なら出来る」

「俺の何を知っているをいうのだ!」

「君はエクシードでありながら幼かった私の命を救ってくれた
 種族に左右される事無く命の尊さを知っている男だ」

「貴方はその俺に十字架を背負って生きろと言ってるのだぞ!?」

「それを乗り越える強さを含め君しかいないのだ
 わかってくれ、誰かがやらなくてはならないんだ」

「だったら自分でやれば良い! 貴方こそ王に相応しい!」

「私は世界を滅亡させた…」

「世界を思っての事です!
 自分の命を懸けてまでエドラスを想える貴方の強い意志こそ、今必要なのです!」

「しかし…」

「確かに成功すれば民の混乱は止まるかもしれませぬ
 しかしこの作戦が成功したところで、悲しむ者が出ることだって事実でしょう!?」

「っ、」

「何年も貴方の帰りを待っていたアギトに何の礼もしないまま死ぬのは俺が許さない!
 例え世界が幸せに出来ても、アギトを幸せにする事は出来ない!」


リリーの言葉に今度はジェラールが息を呑む番だった。




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