第5章 さらば、もう一人の友よ
<side out>
「王子…」
「これでよいのだ」
此処はアニマを作り出す部屋。
思念体のアギトが向かった場所は此処だったのだ。
部屋にはジェラール、リリー、そして思念体のアギトがいた。
二人だったが今は一つになっていて、光輝く球体に手を翳していた。
『これで魔力は足りたか?』
「あぁ、本当にありがとう」
『このくらいどうって事ねぇよ』
アギトが手を翳していたのはアニマを作り出す時に使う、魔力を集束する装置だった。
大気中から魔力を集束しても良いのだが、それだと魔力の増減に敏感なドロマ・アニムに異変を悟られ兼ねないので、ジェラールはアギトに頼んだのだ。
今ジェラールが行っているのはアニマを作り出す事。
しかしファウストと違うのは…アニマを"逆"展開し、この世界の魔力を消滅させる事だった。
「魔力があるから人は争う だから魔力をこの世界から消滅させる
逆展開させた時空間を通り、この世界の魔力はアースランドへと流れる
魔力の豊かなアースランドではこの魔力はすぐに気化し、自然の一部となるのだ」
『じゃあ俺は本体に戻るぜ』
「ありがとうな」
『ったく、もう何回目だよ じゃあな』
そう言うと、思念体のアギトは散霧して消えてしまった。
アギトの思念体だった魔力の幾つかもアニマに吸い寄せられ、上へと昇っていく。
その様子を見て、ジェラールは呟いた。
「新たな世界の為…エドラスは一度滅ぶのだ」