第5章 さらば、もう一人の友よ
…だが、それは長く続かなかった。
突如としてアギトの鼻が、耳が、全感覚が…何か嫌なものを感じ取ったのだ。
『、っ』
背筋を伝い落ちる嫌な汗。
これは…殺気…!
「!?、が…は…!」
刹那、空を切る音…鎧を砕き、肉を貫く音…込み上げてくる血をゴポッと吐き出す音が皆の鼓膜を揺らした。
何処からか放たれた"何か"がリリーの体を無情にも鎧ごと貫いたのだ。
「リリーーー!!」
ジェラールの悲痛な叫びが静かなる空に響き渡る。
伸ばした手は何も掴めず、空を切った。
崩れ行くリリーの背後から見えたのは白い硝煙と緋色の髪…
「…まだだ! まだ終わらんぞ!」
突然すぎる事にみんな頭が付いて行かない。
ただ、それでも目の前では腹に穴を開けたリリーがゆっくりと崩れ落ちて行く。
リリーを貫いたのはエドラスのエルザ…ナイトウォーカーだった。
「誰か…リリーを助けて!」
「任せて下さい!」
目に涙を溜め、リリーが消えて行った場所へ手を伸ばすシャゴットを四長老が止める。
代わりに一人のエクシードが名乗りを上げ、リリーを追い掛ける様に勢い良く降下して行った。