第5章 さらば、もう一人の友よ
ウェンディとシャルルは痛みと悲しみに耐える様に閉じていた瞳を恐る恐る開け、辺りに目を向ける。
すると、二人を囲んでいるエクシードを分断するかの様に地に突き刺さった幾本もの白い矢が目に入った。
「…だから嫌なんだ、この国は」
上から発せられた凛とした、しかし棘のある声に、皆空を仰ぎ見る。
そこには人間とエクシードのハーフの様な容姿の虎のエクシード…ルークの姿があった。
その手には矢を放った事で小刻みに揺れる弦が紡がれた長弓。
「え、あれは…堕天のルーク?」
「この矢は奴の仕業か…!」
「何でこんな所に人間に降った堕天が…!?」
「る、ルーク…!? な、何で君が此処に…」
「黙れ、喋るな」
「「「ひぃ…!」」」
ギロッと効果音が付きそうなルークの睨みを受け、悲鳴を上げて押し黙るエクシード達。
その目は猫など甘ったるいものではなく、鋭いハンターとしての虎の瞳だった。
再び静寂に包まれた広場にルークはスタッと舞い降り、そして困惑の表情を浮かべているウェンディとシャルルに笑みを浮かべた。
「この国の奴らはみんなおかしいんだ
だから、こうでもしないと話なんか聞いて貰えねぇぜ?」
「え…ぁ…あなたは…?」
「俺はエドラス王国第二魔戦部隊隊長、ルークだ」
「王国軍…!?」
「何でこんなとこに…」
驚きに目を見開き、焦り出す二人をルークはおかしそうに見、「大丈夫」と言葉を紡ぐ。
それを二人はポカンと見つめながら言葉の続きを待つ。
「俺はエドラスのアギトの友人だ
んでアースランドのアギトにアンタ達を守るよう言われてな
だから、アンタ達の味方だぜ」