第4章 再会と離別を同時に
ローバウルはナツとウェンディの言葉に一度目を伏せ、表情を変えぬまま皆さん、と言葉を紡いだ。
「ワシがこれからする話を良く聞いてくだされ」
「…?」
「まず初めに、ワシらはニルビット族の末裔などではない…ニルビット族そのもの、四百年前ニルヴァーナを造ったのはこのワシじゃ」
「何…!?」
「嘘…」
「四百年前…?」
「は…?」
思わず、全員が驚きの声を上げる。
ナツなんてポカーン…としてしまっている。
それもその筈。
魔導士と言えど人間だ。
四百年も生きられるわけがない。
ゆっくりとその歴史を語りだすローバウル。
その顔には苦渋の色。
「…四百年前、世界中に広がった戦争を止めようとワシは善悪反転の魔法、ニルヴァーナを造った
ニルヴァーナはワシらの国となり、平和の象徴として一時代を築いた
しかし、強大な力には必ず反する力が生まれる
闇を光に変えた分だけ、ニルヴァーナはその闇を纏っていた」
「、」
「バランスを取っていたのだ…人間の人格を無制限に光に変えることはできなかった
闇に対して光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる
人々から失われた闇は我々ニルビット族に纏わりついた」
「そんな…」
目を見開き、ウェンディは息を呑んで言葉を失う。
ローバウルは眉を寄せ、目を伏せた。
「地獄じゃ…ワシらは共に殺し合い…全滅した」
「え、…」
「生き残ったのは…ワシ一人だけじゃ…いや…今となってはその表現も少し違うな
我が肉体は当の昔に滅び、今は思念体に近い存在
ワシはその罪を償うため…また…力なき亡霊であるワシの代わりにニルヴァーナを破壊できる者が現れるまで、四百年…見守ってきた」
そこで、ローバウルはフッと笑みを浮かべた。
「今、ようやく役目が終わった」
「そ、そんな話…」
肩を震わせ、拳を握るウェンディ。
すると、ローバウルの背後に控えていた者たちがその姿を消し始めた。
初めからいなかったかのようにどんどん消えていくニルビット族に、ウェンディとシャルルは焦り混乱し、声を上げる。