第4章 再会と離別を同時に
『……』
アギトは黙ってジェラールの背中を見つめている。
しかし胸騒ぎがして堪らなかった。
ゼロとは誰なのだろうか。
得体の知れない奴と戦うナツは大丈夫だろうか。
そして治癒に行ったジェラールも…無事でいてくれるだろうか。
ナツがジェラールの話を聞いてくれるだろうか。
『…ウェンディ』
「は、はい!」
『頼みがあるんだ
俺の代わりに6番ラクリマを破壊してくれないか』
「え、でも…私…!」
アギトは目線を合わせるようにウェンディの前に屈み、額をくっつけた。
そして安心させる様に力強い言葉を紡ぐ。
『君になら出来る
滅竜魔法は本来ドラゴンと闘う圧倒的な攻撃魔法なんだ』
「あ、…」
『ウェンディは天竜だ
空気…いや、空…"天"を喰え
君にもドラゴンの力が眠っている』
「天を……」
*
「ドラゴンの力…私の中の…自分のギルドを守るためなんだ!
お願いグランディーネ! 力を貸して!」
「ウェンディ…」
二人の目の前には黒く澱んだ色をした巨大なラクリマ。
ウェンディはゆっくりと息を吐く。
「もうすぐだわ…、ウェンディ! 集中よ!」
「うん、わかってる…」
スゥ…と息を吸い始めるウェンディ。
ウェンディの周りに空気が渦を巻く様に集まりだした。
集中する為に瞼を閉じる。