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素直になれる日まで。

第1章 プロローグ


「皇子……!こんなとこ、に……居たんです……ね……」


まだ呼吸を落ち着かせていないため、言葉が区切り区切りになってしまった。

でも仕方がないだろう。彼、練紅明を探すのにどれだけ時間を削ったか……!

少し落ち着いた所、私は皇子に近づいた。

しかし皇子は私に気づいていないのか、無言でハトに餌をやっていた。


「皇子。」

「……」

「……皇子ッてば!!!」

「……え?」


え?ってやはり気づいていなかったのか!?

皇子はボリボリと頭をかきながら私を見上げた。

皇子は座ってハトの餌やりをしていたから、見上げているのだ。


「皇子、立って下さい!!!服が汚れます!」

「大丈夫ですよ。これぐらい」


目が合ったかと思えばすぐにハトに目をやった。

……なんですか。せっかく仕立てたのに……!

皇子はお構いなしに餌やり。

ホンッット!皇子はあぁぁぁあ!!



「皇子!それより軍議があるのではなかったでしょうか……?」


イライラしたからだろうか。

自然に声のトーンが下がった。まあイライラしてるからね。

私は短気だから少しの事でも切れることもある。



「……あー。そう言えば……」

「そう言えばじゃありませんよ!皆さんすでに集まってますよ!?あとは皇子だけです!」



皇子は「よいしょ」と立ち上がり、残りの餌をばらまいた。

ハトはバサバサと羽を広げ、餌をつつき、引きちぎった。



「知らせてくれてありがとうございます」

「これも従者の仕事です」



未だにイライラしたままだ。自然にソッポを向きたくなる。

しかし、相手は主だ。ソッポを向くわけにはいかない。

すると、頭に何か温かい何かが触れた。

それに気づいたのはほんの数秒。


皇子の手だ。


皇子はナデナデと私の頭を撫でているのだ。



「何故そのような顔をなさっているかは分かりませんが、貴女は笑った方が可愛いです」


ニコッと微笑む皇子。


「……っ、どーもありがとうございます」


結局はソッポを向く。

皇子は「それでは」とこの場を離れた。

皇子に撫でられた頭に触れ、私はその場に立ったまま、皇子の背中を見つめた。

皇子の手は大きくて、優しくて……。



嫌いじゃない。


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