第5章 愛はまれに狂気となる。
『李鶴那、この世界はね、
間違ってるの。』
『間違ってる?なんで?』
夢を見ているのか。
ぼやける映像のなかに、
小さなわたしとなつかしい母と父の顔がある。
『うむ。天人…生まれながらにして人間に恨まれ、恐れられる存在だ。』
『でも、私たちなにもしてないよ?』
『そうだね。なにもしてない。
なにもしてない天人も、恨まれるのよ。』
『そんなのおかしいよ。
人間なんて、消えちゃえばいいのに!』
小さな私は酷いことを言うんだな。
『違うの。悪いのは人間だけじゃないのよ。
だからといって天人も違うのよ。
人間も、いまあなたがいったように、
天人たちに恨まれ憎まれてるの。
なにもしてないひともなかにはたくさんいるのにね。』
『偏見は世界を濁す。』