第13章 女神なんかじゃない(逢坂紘夢)
友達のルリカが教えてくれた。
「E組の逢坂って人、愛のこと好きなんじゃない?」
って。
「誰それ?」
私は首を傾げる。
「んー…私もよく知らないんだけどー。E組の子が言ってた。聞かれたんだって、その逢坂くんに。『君、神田さんの友達の皐月さんの友達でしょ?』って」
「…遠いね」
ルリカの説明に私は笑う。ルリカも笑って続ける。
「ウケるよね。一緒に見に行って
みようよ。ウチの友達も愛のこと見たいって言ってたし」
「はぁ? なんで?」
「あの逢坂くんが好きな子ってどんな子なんだろって」
「何それ。あの逢坂くん…って、なんか変な人ってこと?」
「だから! 見に行こっ!」
…
ルリカと2人でE組の教室に行く。
「マユー! 英和辞典貸してー」
E組の教室の前の扉を開けて、大声で叫ぶ。
E組の子たちが一瞬、顔を上げてこっちを見る。
ちょっ…恥ずかしい。
ていうか、どの人が逢坂くんて人かわかんないし。
「おー。ちょっと待って」
ルリカの友達のマユちゃんらしき子が返事して机の中を探ってる。
私はE組の教室を見渡してみる。
みんなこっちに注目したのは一瞬だけで、友達との会話や手もとの本、スマホに視線を戻してる。
誰も私のことを気にしてる様子なんてない。
私のことを好きかもしれない人なんて…やっぱいないんじゃない?
私はちょっとがっかりする。