第10章 わたしの紘夢(逢坂紘夢)
夜、私はベッドの隣に布団を敷く。
ベッドには紘夢を寝かせてあげてるから。
さすがに一緒に寝るのはまだ早いもんね。
私は部屋の灯りを消して、布団に入る。
「おやすみ」
私は彼に声をかける。
返事は期待してない。
しばらくの静寂の後、彼の声。
「一緒に寝ない?」
私は薄暗闇の中、彼を見上げる。
「寂しいんだ…僕。こっちに来て。君と一緒に寝たい」
私は、彼の体温で温まったベッドに潜り込む。
……
ピピピ…
朝、目覚まし時計の音。
あ、私、下の布団の所に置きっ放しだった、目覚まし時計。
私はベッドから降りて、目覚まし時計を止める。
布団を片付けて、忙しく朝の支度をする私を、逢坂くんは寝ぼけまなこでなんとなく見つめている。
制服に着替えて、私はベッドに腰掛ける。
「じゃあ、行ってくるから。今日もちゃんとおとなしくしててね」
私は彼の顔を見下ろして微笑む。
「行かないで」
彼が私に言う。
「置いて行かないで。僕をひとりにしないで」
私は彼の髪をそっと撫でて尋ねる。
「どうして?」
「一緒にいたいんだ。君と。
気付いたんだ。こんなに僕を愛してくれている君といることがどんなに幸せかってこと。
ねぇ、キスしよう」
私は彼の唇にキスする。
彼の舌が私の唇をそっと舐める。
私も舌を出してその舌に触れる。
つかまえてチュッと吸ってあげる。
唇を離す。
彼が潤んだ瞳で、私を見上げる。
「ねぇ、お願い。今日は学校を休んで。一日ベッドの上で過ごそう。君の身体に触れたい…。
だから…手錠を外して」
「うん」
私は頷いて、もう一度キスする。
長い長いキスをする。
…
昨日、久しぶりに食事して脳に栄養がまわったのかな。
紘夢は賢いね。
私が学校行ってる間にいろいろやってみたけど、出られそうにないから、私を懐柔する作戦なんだね。
私にはわかるよ。
紘夢と私は似ているものね。
大丈夫。
このキスが終わったら、ラクにしてあげる。
紘夢はわたしだけのものだよ。
永遠にね。
fin