第5章 星の王子さま(雨宮久遠)
8月
今日も暑い。
午前中だけど30℃とかいってるのかな、これ。
そんな暑い中、私はわざわざ学校へ向かう。
部活もやってない私が夏休みに学校に行く理由。
それは図書館で勉強するため。
というのは人に聞かれたときの表向きの理由。
本当は、会いたい人がいるから。
……
「おはよ、雨宮くん」
「おはよう、愛ちゃん」
雨宮くんがいつもの席で、私にニッコリ笑いかけてくれる。
夏休みの図書館は空いてるけど、人がいないわけではないので、いつも通り静かに話す。
「ふ〜今日も暑いね。わたし水筒にスポーツドリンク入れてきたよ。飲む?」
私は雨宮くんに水筒を差し出してみる。
雨宮くんはニッコリ微笑む。
「ううん。ぼくは早めに来て、もう涼しくなったから。愛ちゃんはちゃんと水分とってね」
「そっか」
私は頷いて、水筒のスポーツドリンクを飲む。
「そういえば、昨日のクッキーとても美味しかったよ。ありがとう」
「本当? よかった」
私、昨日雨宮くんに手作りのクッキーをプレゼントしたから。
「クッキーにマシュマロが入ってるなんて、ぼくびっくりしたんだけど、愛ちゃんが考えたの?」
「ううん。売ってるクッキーを真似したの。雨宮くんマシュマロが好きなのを思い出して」
「覚えててくれてありがとう。ぼくすごく嬉しいな」
雨宮くんがすごく嬉しそうに、ちょっと照れくさそうに笑う。
私も嬉しくなる。
でも…
本当に食べたのかな…?