第15章 如月、部活やめるってよ
「影を知っているからこそ、サンシャインルミナスはあんなに輝けるんだ。だから、キミも…って。割と既にまぶしいですけどね、キミは」
「まぶしい…私が?」
「うん。ボクには姉妹がいるのでわかります。キミのその美しさは一朝一夕で手に入れたものではないことを。
スッピンに見える作りこまれたナチュラルメイク。計算しつくされた靴下とスカート丈の配分。その美しい肌と髪を維持するために食事にも気をつかっているんじゃないですか?
だから、ハイ、これ。頑張る女の子の味方、サンシャインルミナス。どうぞ」
オタクの先輩がニッコリ笑って、私にカードを差し出す。
ていうか、ただのオタクじゃない!
この人はいったい何者なんだろう…。
私のナチュラルメイクを見破るなんて!
「私、頑張れるかな…」
「キミは充分頑張ってます!」
私を認めてくれた!
私はカードを受け取り、ベンチから立ち上がって、頭を下げる。
「ありがとうございます! 改めてお礼にうかがいます。先輩のクラスと名前を教えて頂けますか?」
「コホン…名乗るほどの者ではございません…とか言ってみたいけど…
ボクの名前は芹澤悠吏。3年A組だよ。コンゴトモヨロシク…なんちゃって」
芹澤先輩が楽しそうに笑う。
私はもう一礼して、その場を立ち去ろうとする。
「あ! キミの名前聞くの忘れた! キミの名は?」
芹澤先輩が背後から呼びかける。
「降り注ぐ太陽の恵み! サンシャインルミナス!」
私はクルッと一回転しながら、サンシャインルミナスの決めゼリフと決めポーズを披露する。
10年ぶりくらいにやったけど、身体が覚えてるもんなんだ。
ポカーンとした顔で先輩が見てる。
ちょっと我に返って恥ずかしくなる。
ダッシュで逃げる。
「またね! サンシャインルミナス!」
芹澤先輩の声が後ろから聞こえた。