第1章 82回目の高校2年生
澤村は菅原の言葉に黙ってしまった。
少しの沈黙。
遠くからバレーボールが床に当たる音やシューズが擦れる音がする。
沈黙を破ったのは澤村だった。
「一応....」
「え?」
「一応決まってんだ....」
「決まってるならいいじゃん。なんでそんなに弱気なの」
菅原がため息をついた。
澤村が言い訳をするように
「その...長いんだ。言うことが。うまくまとまらん」
「...長くてもいいと思うよ。ほら、大地。練習戻るよ 」
菅原がそう言うと一足先にコートに戻って行った。
(いいのか、長くても...)
****
部活が終わり、バレーボール部は9人で一緒に帰ることになっている。
東北の4月は春と言ってもまだ寒さが残る。
桜は咲き始めたばかりでまだまだこれから。
まだ16時というのに辺りは少し暗くなり始めている。
吉川は縁下と話しながら歩いている。
縁下とはクラスが違うため、部活以外ではあまり話さない。
別れ道が来て、吉川は「お疲れ様です」と言い、1人別の道を歩き出した。
第1章 fin.