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絶対零度が溶ける時

第1章 出逢い


「え…。」


自分の名前を覚えていてくれた事が意外だったのか、少年は驚いた表情をうかべた。



「…


私…

クラスの人の名前…覚えられないほど馬鹿じゃない…。」


少年の表情を見て、馬鹿にされていたのだと思った彼女は、少し怒り気味で言った。



「…


クスッ」



それが面白かったのか、少年は笑みをこぼした。



「…何で笑ってるの…。」



笑われた事に腹がたったのか、少女はますます嫌な顔をした。



「…いや、

怒った顔が可愛いな…って思っちゃって…。

…ごめんね…?」


少年は先程の暗い表情とは真逆な、柔らかい綺麗な笑顔を少女に向けた。



だが少女はその少年の表情を見て、目を見開いた。

何故か顔色がだんだんと悪くなり、俯いてしまう。


少年なその表情に気づかなかった。




そして、少女は先程のような無表情で少年に言い放った。




「…あんた…




やっぱり嫌い…。」





その言葉に、少年は酷く悲しんだようだった。




確かめるように、少女に問う。



「…やっぱりって?



…僕の事…

…前から嫌いだったの…?」



悲しげな少年を見捨てるように、少女は言葉を続ける。



「…そうだよ。



…あんた、弱いから。」




少年の表情もまた、少し暗くなった。

諦めたように、彼女に言葉を返す。




「…そっか…。




…でも…、そうだよね…


僕…何もできないから…。


…ごめんね…。」










____その途端

彼女は顔を上げ、少年に叫んだ。







「どうして謝るの!!!!」







「っ!!?」



急に叫んだ彼女に少年は肩をビクつかせて驚いた。




自分が叫んだ事に今気づいたのか、少女自身も驚いていた。



「…

ごめん…


驚かせちゃって…。」



少女はまた俯いて、少年に謝った。



「…


ううん、大丈夫だよ。


…すぐ謝る癖があるから、僕は嫌われちゃうんだよね…


…面倒くさいでしょ…僕って…。」




自嘲気味に笑う少年をみて、彼女はもどかしい気持ちを抑えるような表情をちらつかせた。



そして、急に何かを思い出したように校舎裏の奥を見つめた。


少女が先程行きたがっていた場所だ。
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