第1章 見つめる星 レギュラス七夕夢
一日の授業も終わり夕食を早めに食べた私は、今から夕食を食べるべく大広間へと集まり始めた人達の間を縫って進み城外へと出た。
まだ、うっすらとしか星が見えない空を見上げくるくると身体を回転させて歩く。
そうして、たどり着いたハグリッドの小屋とホグワーツ城を結んだ中間辺りの草の上で改めて空へと視線を向けた。
全方位へとゆっくり視線をやった後、ため息を付きながら腰を下ろし、直ぐに大の字で寝転がる。
やっぱりもう見えないか…ここまで歩いてくる間に暗さが増しより一層輝きを放ち始めた星々を眺めてから私は目を閉じた。
季節は春から夏へと変わり始めた。
夏といっても此処イギリスの夏はサッパリとし時折涼しい風が吹くとても過ごし易い日々が続く事が多い。
今日もそんな日ではあったが、夜空は気候とは違いハッキリと季節の変化を見せていた。
「ネームなにしてるんです?」
突然かけられた言葉はきっと私宛だ。
だって、他には誰もいないし…
そんな事を思いつつ、草を踏みしめ隣に立った人物を見上げた。
「あ、生きてたんですか。死んでるのかと思いました」
なんて言って、悪びれる様子も見せずに私の隣へと腰を下ろした彼。
「なにも、してないよ」
大きく広げた身体を赤子の様に畳みながら彼の方へ身体を横に倒せば、彼は片手を地に着いて私を見下ろしていた。
「最近は星を見てない様でしたけど」
私から視線を外して「何かあったんですか?」と質問しながら、さっきの私みたいに寝転び空を見つめ始めた彼ーレギュラス・ブラック。
私は彼の横顔を見つめた。
昔はよく見ていた星も見ずに最近は彼ばかり見ていた気がする。
彼の質問に答えない私を不思議に思い私を見た彼と視線が絡み合う。
なにを話すでもなく見つめたまま外される事のない、元は灰色の筈だった黒の瞳。
私が笑うとレギュラスの瞳の中の私も嬉しそうに笑った。
「僕ばかり見ていないで星をみたらどうですか?」
耐えられなくなったのか、サッと顔を夜空へと戻してしまった彼の頬は赤く見える。