第1章 本編
「ゆ…侑士…」
「どないしたん?って鼻血出とるがな!今拭いたる」
そういうと、忍足はポケットから白いハンカチを取り出した。そして私の鼻を押さえてくれた。勿論、白いハンカチは私の血で真っ赤になった。しばらくして、鼻血は完全に止まった。
「で、いきなりどうしたん?」
「侑士を起こそうとしたら、ボールが飛んできて…」
「何やて!?アイツらの仕業なん!?」
忍足は立ち上がろとしていた。
「待って!あの子達怒らないで?」
私は忍足を座らせた。
「私の不注意だから」
「せやかて不二子、謝りもせんのやで?」
忍足は険しい表情をしている。
「私は侑士が心配してくれるだけで、幸せなの」
私は笑顔で答えた。忍足は不意打ちを食らったのか、固まっていた。
「侑士?」
「あ、えっ…そうか」
忍足はちょっと照れくさそうに笑っている。
「キスして…」
私はちょっぴり大胆発言をした。普段は言わないような事を口にしたのだから。
─ CHU ─
忍足は私にキスをした。濃厚で優しいキス…全てを持っていかれそうな、そんな気がした。
「不二子…愛してる…」
「私も愛してる…」
「手貸してくれへん?」
「?いいけど…」
忍足は私の手を自分の手のひらに乗せた。
「これ…つけてもえぇか?」
忍足の手には、夢でみたシルバーリングがあった。私はびっくりしたが、コクリと頷き…
「これでずっと一緒や。離さへんで?」
私、泣き出しそうなまま、ウンウンと何度も頷いた。忍足は優しく抱き寄せ、こう囁いた。
「不二子には、俺の全てをあげたいんや…」
END.