第1章 本編
「侑士ぃ~!」
私は背後から物凄いスピードで抱きついた。
「ガハッっっっ!!」
何やらむせているようだ。
「ねぇねぇ侑士!明日暇?どっか出掛けよ?」
「お前はホンマに悪いやっちゃなぁ…」
何やら不機嫌そうな色を浮かべている。
「普通、彼氏に対する行動…そやないやろ?ちょっと笑えへんで…」
「ゴメン…でもでも!早く言わなきゃ侑士、予定入れちゃうぢゃん!?」
私は声を張り上げて言った。これには歴とした理由があるのだ。ことはかれこれ数ヶ月前に遡る…
「あんなぁ…自分に言いたいことあんねん…」
「何?中傷とおやじギャグは聞かないからね!」
私はケラケラ笑いながらお腹を押さえるポーズを取った。
「………」
私は突然、忍足が無言になったので笑いを止めた。
「…何?そんな深刻な話なの?」
私は顔を覗き込んだ。忍足は私の顔をじっと見つめた。穏やかで優しい顔だった。
「…俺な、お前が好きやねん。」
「………はぁ?冗談なら笑…」
「冗談やないで!?俺はお前の事を本気で…!?」
「スト―ップ。」
私は人差し指を忍足の口に押し当てた。
「その前に1つ、謝っておきたい事があるの。」
「謝りたいこと?」
忍足は首を傾げた。
「うん。実はこの間、ジロちゃんに"キス"されたの…ゴメン。」
「!何で自分が謝るん?」
「だって私も…好きだから…」
私は小さく呟き、そして俯いた。今、顔を見られたらたまらないから…
「…顔上げてくれへんか?」
「やだ…」
私は恥ずかしさを隠したいがために、そう言った。すると忍足がこちらに手を伸ばした。
「!」
私はビクッと体に力が入った。忍足の手は、私の頬に添えられた。そして静かに、私の顔を上げた。
「見ないでって言ったのに…」
「自分が可愛いことするから悪いんやで?」
「えっ…?」
─ CHU ─
忍足はいきなりキスをしてきた。思わず私は固まってしまった。
「好きや…不二子。」
「私も…」
そして再びキスをした。こうして私たちは付き合う事になった。しかしっ…!