• テキストサイズ

髪垂れた未来を(銀魂:沖田夢)

第1章 髪垂れた未来を


あまりにも必死に頼み込む十四歳の少女に苦笑が浮かぶも、結衣は快く彼女の願いを受け入れる。実は友人の頼みだったり、ボランティアであればタダで髪をセットしているのが日課だったため、彼女の頼みは苦ではなかった。時々とは言わず、毎朝でも良いと言った一言に、神楽は飛び跳ねるほどの喜びを見せる。それが嬉しくて結衣も以来、毎朝神楽の元へ訪れた。

あれから五年。今では19歳、江戸で言えば既に成人済みの年齢である神楽だが、少女の頃から変わらないあどけなさと笑顔を見せてくれる。それに結衣の心は暖まった。

いつものように、結衣は事務所のソファに腰掛けて道具箱を横に開け広げる。神楽は地面に座る面積を確保するためにテーブルを脇に移動させ、キッチンから取って来たラップを抱え、結衣と向き合うように足下へと座り込む。これで準備万端だ。

手始めに寝癖を櫛で丁寧に梳き、結衣は神楽に髪型の注文を聞いた。これまた「待ってました!」とばかりに、神楽は要望を伝える。

「今日も仕事がないネ。だから、うーんと可愛くして欲しいアル! 前髪もちょっと伸びたヨ。切ってくれるアルか?」

「了解」と返事をし、手早く結いは神楽の髪に取りかかった。

仕事のある日は髪をしっかりと、けれどスタイリッシュにアップにした髪型をするのが定番だ。だが万事屋に舞い込む仕事量の少なさは……失礼かもしれないが、言わずとも知れている。だがその分、神楽は色々な髪型を試せるので内心嬉しいようだ。

ラップを、器のように形作った両手に乗せて、神楽は切り落とされる前髪を受け取る用意をする。その器に落ちるように結衣も器用に前髪を鋏で切り揃えていった。

良い長さになれば、結衣は落ちずに顔へ張り付いた髪の毛を丁寧に払い落とす。その作業が終われば、神楽はラップを丸めて握りしめた。神楽はゴミ箱へそれを捨てる時間が惜しいのか、早く髪型に取りかかれるよう、背を向けて座り直す。結衣も彼女の望むままに手を進める。
/ 19ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp