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髪垂れた未来を(銀魂:沖田夢)

第1章 髪垂れた未来を


「おはようアル! やっと来たアルな! 今日も可愛い髪型をお願いするネ!」

「おいチャイナ、ガキみたいに騒ぐな。おっと失礼、オメーは図体のデカいガキだったな」

「テメーは眼中にねーんだヨ、ドS野郎! さっさと働きに行けボケェ!」

出会ってから一つも変わらないやり取りに、結衣はクスクスと笑う。こうして出会い頭に喧嘩する二人は、今でこそ微笑ましい。昔は殴り合いを超して近所を破壊しまくって迷惑をかけるコンビだったが、現在では口上だけで終わっている。その上、客観的に見ると大の大人が子供のようなやり取りをしているのが面白い。思わず肩を揺らしてしまうほど笑いが結衣の口から零れる。その笑いが喧嘩終了の合図であるのも暗黙の了解なため、総悟と神楽の二人は睨み合いながらも口論を止めた。

「んじゃ、あとは頼まァ」

一言だけ神楽に発し、総悟は結衣に「いってきます」のキスをする。少し濃厚なキスを神楽に見せつけた後、勝ち誇った笑みのまま階段を降りて真選組へと向かった。最期まで憎たらしい態度の総悟に向かって、神楽は舌を出す。だが彼の姿が消えれば、打って変わって神楽の表情が満面の笑顔に戻った。そして結衣を万事屋の中へと招き入れる。

こうして万事屋へ毎朝訪れるのが、結衣の日課となっていた。それは、結衣が五年前に寿退社したのを聞きつけた神楽からのお願いでもある。元々髪は自分で結うのが習慣だった神楽。しかし、幼心にお洒落な髪もしてみたい願望はあった。万事屋に美容室にかけるお金なんざありはしないし、給料も酢昆布。髪を短く整えるカット代は銀時に出してもらいえるだろうが、セットとなると話は別だ。だから近所付き合いのある結衣とは仲は良くっても、結衣のお店へは入った事がない。

だが時は流れ、結衣は結婚と言う形でお店を畳んだ。主婦の道を望んだ彼女は、総悟の妻として日々を過ごす事となる。そうなる事で、結衣自身に時間の余裕が生まれた。店と家事を両立させていた独身時代とは異なり、自分のために使える時間が増えたのだ。それを知り、神楽は渾身の土下座をする。時々でも良いから、結衣に可愛い髪型をセットしてもらえないか頼んだのだ。
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