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髪垂れた未来を(銀魂:沖田夢)

第1章 髪垂れた未来を


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目が覚めた結衣の頬には涙が伝っていた。とてつもなく長い、しかも心地悪い夢を見たような気がしたのだが、如何せん、記憶に残っていない。妙にざわつく胸と、顔に生暖かく落ちる水分しか余興がなかった。

涙で霞む目を少々強引に開けば、まだ頭が冴えない状態でも己を抱きしめている総悟が確認できる。ふと、彼と目が合った。

「……あれ? 髪切った?」

「なに寝ぼけてるんでィ? 『笑ってよきかな』の多毛さんの真似でもしてるつもりだったら、笑えないくらいダッセーぜ。いくら番組が最終回しちまったからって、夢にまで見るもんでもねーだろ」

呆れた表情で最愛の女性を見ながらも、総悟は親指の腹で結衣の涙を優しく拭き取った。

「何だか、寂しい夢を見た気がするの」

「まあ、時期が時期だからねィ。情緒不安定なだけだろ」

意味の無い涙の理由は気にせず、二人はせっせとその日の準備に取りかかる。目を覚ますために洗顔をし、寝間着は脱ぎ捨てて洋服に着替えた。総悟は仕事の制服である黒いスラックスとワイシャツに袖を通し、結衣はゆったりとしたワンピースを身につける。それぞれが身だしなみを整えれば、総悟は結衣の手を引いてキッチンへ誘導する。いつの間にか過保護になってしまった彼に微笑を浮かべるが、結衣は総悟の好きなようにさせていた。

別室のキッチンに辿り着けば、ここからは共同作業で朝食の準備に取りかかった。多めに作った夕飯の残り物を冷蔵庫から取り出し、それらを電子レンジで温め直す総悟。結衣はコーヒーをからくりで簡単に用意し、食器をテーブルに並べる。

昨晩の夕餉だった肉じゃがと白米、インスタントのみそ汁とコーヒーが揃えば、食事の用意は出来た。和食とコーヒーの組み合わせはミスマッチではあるが、そこはここの食卓のご愛嬌。最近は特に忙しい毎日を送る二人にとって、美味しい食事を二人でゆっくり食べれるだけで幸せなのだ。料理も幸せも噛み締めれば、朝はそれだけで十分なのである。
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