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髪垂れた未来を(銀魂:沖田夢)

第1章 髪垂れた未来を


彼の存在があるか、ないか。些細なようで重大な要素。普段から坂田銀時を「旦那」と親しんでいる沖田も、それは身をもって体験している。だからこそ、坂田銀時のいない不安が大きかった。彼が居なければ世界が回らないような気がしたのだ。

でも、だからと言って沖田は絶望から諦めを感じているのではない。沖田の中にあるのは、安堵を含めた諦めだった。

「もう、良い意味で諦めてもいい気がしたんでィ。結衣に会いに行っても構わないと思った。だから、会いに来た」

珍宝……ふらりと現れた卑猥な顔をした男。彼が出現した事により、再びかぶき町が一枚岩となった。初めて会うはずなのに懐かしさを覚え、そして妙な安心感が胸に宿る。彼と関わって行くうち、何か失ってしまった物を取り戻せたような気がした。それを肯定するように、 空に沈み始めた太陽を見た時、その景色が「何もかもを投げ捨てて良い」合図のように感じた。何故そう思うのかは分からない。けど、その解放感があったからこそ、沖田は結衣に会う決断が出来たのだ。

「そう」

語られなかった事も含め、沖田の全てを受け入れた結衣の一言は、二人を急な眠気に飲み込ませる。敵もまだ江戸に潜伏しているはずで、他のかぶき町の住人は必死に捜索を続けているのだろう。しかし、沖田には根拠なく、もうこの件が解決されたかのように感じた。部屋に差し込む美しい夕日を浴びながら、全てが無に消すかのように二人の意識は遠ざかる。
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