第1章 髪垂れた未来を
「特に貴方のハニーブラウンの髪は人気が出るわ。皆が染める時に好きな色なの」
「こんな色が? まあ、確かに日本人の中では珍しっ…………あ」
「やっぱり嘘ついてた」
話の内容に気を取られ、一瞬でカマをかけられる。己も白髪設定だった事を忘れてしまった。
「どうして?」
色々な疑問をのせた一言だった。どうして白詛にかかっていると嘘をついたのか。どうして危険を犯してまで、結衣と共に過ごしているのか。どうして今になって彼女に会いに来たのか。どうして、どうして、どうして。
それを汲み取ったのか、沖田は結衣の小さな体を更に抱き寄せ、耳に囁くように答える。
「もう、良いような気がしたんでさァ……」
本当に、もう何もかもが良いような気がしていたのだ。
ずっと今の世界をどうにか出来ないかを、自分なりに模索し続けていた沖田。けれど、解決方法は一向に見つからないまま五年が過ぎてしまった。正直、心の隅で未来に希望はないと感じていた。
思い返せば既に、五年前で歯車は壊れていたのだ。いつの間にか姿を消してしまった、万事屋の看板を背負う男。ヤツがかぶき町からいなくなったと同時に、地球の悲劇が始まった。さすがに「坂田銀時の不在=かぶき町の不幸」と考えるのは安直で馬鹿げているが、そう信じるには十分なほど、彼には圧倒的な存在感がある。
昔の噂にも一つ。彼がかぶき町四天王に潜んでいた宇宙海賊春雨の手から、町を護った事もあるそうだ。もちろん、彼だけで成し得たものではない。かぶき町を愛し、かぶき町を渡すまいと頑張った頑固者も大勢いた。けれど、その戦いも坂田銀時なしでは勝利は納められなかったような気がする。
真選組の動乱騒ぎもそうだ。主に近藤、土方、そして沖田が事の中心にいた騒ぎだが、万事屋の存在がなければ、一筋縄ではいかなかったであろう。その更に前にあった事件……沖田の姉であるミツバが関わった事件でも、彼には助けられた。見廻り組と一悶着した事もある。彼は妙な面倒事に首を突っ込む羽目になる男なのだが、ありがたい助っ人である事に違いはない。