第4章 《Free!》惚れたあの子
《御子柴清十郎side》
中学の時から好きな奴がいた。一目惚れだったと思う。綺麗な顔立ちにすっきりとまとまった黒髪。時々見せる可愛い笑顔に惹かれた。
だが…中学でその気持ちを伝えることはなく別の高校へ。仲は良かった方だと思うが…。
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高校三年の夏、部活も引退したがやはり、水泳は止められない。近くの市民プールに出向くと…。
「あれ?御子柴じゃん、久しぶり!」
「え?み、三谷か?」
「おうよー元気にしてたか?御子柴!」
自分が中学の時から片想いをしていた彼女…三谷美樹がそこにいた。話を聞くとどうやらここでバイトをしているらしい。週に一回行われる水泳教室の講師も勤めているらしい。
「三谷こそ、元気だったかー?」
「元気だって!それより、休日のこの時間、部活じゃないのか?」
「もう引退だよ、俺は」
「そうか、もうそんな時期か…」
水着姿だと言うことはこれから泳ぐのだろうか。水泳でも話が合うこともあり、よく昔は泳いだが…。
日が経つとあちこち成長するんだなー
「御子柴もこれから泳ぐのか?」
「あぁ」
「じゃあ、ちょっと手伝ってくれない?水泳教室の講師」
「え?」
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「美樹センセー!」
「おー皆よく来たな!」
今日行われる水泳教室の講師が一人休みになり、人手不足だったところに丁度俺が来たと言うことらしい。
「随分、人気なんだな?三谷」
「まあな、毎週教えてるし」
若干子供たちに嫉妬しつつも水泳教室は始まった。今日はクロールの練習。クロールは息継ぎが出来ない子が多く、教えるのは大変だった。
「そうそう!息継ぎする時は後ろを見る感じで顔を出すんだ」
熱心に子供に教える姿は母親みたいだった。
「御子柴センセー?」
子供に名を呼ばれ、我にかえる。しばらく三谷に見入ってしまったらしい。
「センセー、美樹センセーの彼氏?」
鋭い質問が来た。子供はこういう事を平気で聞いてくる。