第10章 最期のトキ
雅紀side
ゆき:「…潤ッ…潤ッ…」
潤の名前を呟いて
泣いているゆきちゃんが
ちょっとだけ、愛しくなった。
でも、彼女は、
潤のことが好き。
それは、潤が
居なくなっても
変わらないだろ…
“アイツの彼氏になってやれ”
潤は、そう言ったけど…
彼女の気持ちは、
俺に向くことはない。
きっと…
ゆき:「…雅紀くん。…教えて。潤くんのこと。」
雅:「うん。潤はね、聞いたと思うけど、生まれたときから、この病院に居るんだ。…幼なじみなんだけど、出会ったのは、この病院。」
ゆき:「…そうなんだ。」
雅:「おれは、喘息持ちだったから…でも、潤は、難しい病気で。体調いい日なんて、めったにないんだ。何度も生死をさ迷ってた…」
ゆき:「…そうなんだ。もしかしたら、私たち、出会ってなかったかもしれなかったんだ…」
雅:「…そうだね。でも、潤は、弱音を吐かないで、治療を頑張った。…それで、しばらくは、体調いい日が続いた。そんなとき、君に会った…」
雅:「…君が、潤に生きる希望を与えてくれたんだよ。」
ゆき:「…え?」
そう、君が、居なかったら、
潤は、“生きたい”
なんて思わなかったと思う。