第57章 The calm before the storm.
「もういっぽーーん!」
日向が叫ぶ声が聞こえた
葵
「よし……!」
私はまた同じようにエンドラインから遠ざかり、ボールを数回床に打ち付け、息を整える
そしてー
葵
「っ!!」
やばっ!
めっちゃ失敗した!
ボールに手が触れたと同時にそう感じる時って、ありますよね?
うん。まさしく今、私はそれを感じました
ボールはまっすぐ木兎さんの正面へ
木兎さん
「よっしゃ!」
グッ、とレシーブ体勢をとる木兎さん
突き出された両腕へボールは誘い込まれるように飛んでいく
バチッ!!
ドゴッ
鋭い音に鈍い音が加わった
木兎さん
「……あれ?」
赤葦さん
「……………」
凍りつく梟谷学園部員
そんな中、強烈な一撃を喰らったままの姿勢で何も言わない赤葦 京治選手
副主将であり、2年であるはずの赤葦さんが、木兎さんを慌てふためさせるのにその沈黙だけで充分だった
説明しよう。
私の打ったサーブは木兎さんにレシーブされる、予定だった
が、回転がかかってくれていたおかげでレシーブは乱れた
そう、乱れただけならよかったのに。
まさかそのボールが、乱れた上に、赤葦さんの頭をクリーンヒットするなんて、一体誰が思うだろうか。いや思わない
木兎さんは青い顔して「あ、赤葦っ!?大丈夫か!?!?」と涙を浮かべながら「俺のレシーブミスで!赤葦……!あかあーーーし!」と謝罪
対して赤葦さんは下を向いたまま何も言わずだんまり続けてる
私も悪いよね!?え、悪いんだよね!?
罪悪感に見舞われた私も梟谷のコートへ駆けて、謝った
葵
「すみませんっ!!だ、大丈夫ですかっ!?
私がサーブミスしたばっかりに……!」
赤葦さん
「……あんたは謝らなくてもいいだろ
木兎さん、レシーブちゃんと練習してください」
木兎さん
「はい……」