第55章 そして少年少女は気付かされるだろう
ミーンミンミンミンミー…………
ペナルティで外の坂をダッシュするたびに、心なしかセミたちの鳴き声が大きくなってきている気がする
そして、気温も同じようにして高くなってきてる気がする
葵
「ゲホッゲホッ……!
っつー!!なにこれ溶けそう………」
東京(埼玉だけど)ってこんなに暑かったっけ??
なにこれ、温暖化?
猛暑日?
死んじゃうんですけど!!
みんなも暑さでバテつつある
暑さって、体も心も思うようにならない
余計にイライラしちゃったりする
あの日向ですら、イライラしてる
多分、日向の場合は暑さだけが原因ではないと思うけど
きっと、日向も私も
思っていることは一緒だと思う
影山と日向はまだあれから口をきいていない
新しい速攻が上手くいってない
日向
「オイ!!
今 手ェ抜いたな!!?」
影山
「………?
………手を…………抜く?………俺が?バレーで??
もう一回言ってみろよ………」
久々に会話をしたと思えばまさかの喧嘩
影山が日向の胸倉をつかむ
葵
「やめなよ」
日向
「今の 落ちてくるトスじゃなかった!!」
新しい速攻は日向の打点付近で“落ちる”トス
威力を殺しているから打点に合わなければ即ミス
最近日向はスパイクを気持ちよく打てていない
それは当然ストレスになる
だから影山は打たせようとした――
影山は無意識に妥協した――
でもこれは、妥協なんかじゃない
影山は、ちゃんとスパイカーのことを考えていたってことだ
日向
「止めんな影山!!!」
日向は何で怒る?
影山は、何でそんなにも迷いの晴れた顔をしている?
葵
「………ケホッ」