第47章 烏、東京へ
黒尾side
はぁーあと溜息を付きながら葵が去っていくその小さな背中を見つめていた
澤村クンが自販機で何を買おうか迷っているところを俺は後ろから声を掛けた
黒尾
「よぉ 烏野のキャプテンくん」
澤村
「ん? ああ…音駒の」
黒尾
「何買ったの?」
澤村
「俺? とりあえずサイダー」
黒尾
「俺は何買おっかな〜」
自販機の中の商品を指さしながら俺は何を買うか迷った
その隣では、ペットボトルの蓋を開け、飲んでまたそれを閉めたまま立ち尽くす澤村
澤村
「…………なぁ」
黒尾
「ん?」
澤村
「葵のことなんだけど……さ
お前はアイツと幼なじみなんだろ?」
「そーそー」と自販機に向かったまま答えた
澤村
「ずっと引っかかってたんだけどよ
前に『無茶させないでくれ』って言ったよな?」
ガコンッ、と音を立てて落ちてきたコーラを拾い俺は斜め上を眺めた
黒尾
「あ〜、言ったな」
澤村
「あれはどういう意味なんだ?」
黒尾
「単純だろ?
無茶はさせねぇんだよ」
何いってんの
無茶の意味を知らないのか?
澤村
「意味はわかってるんだけどさ……」
澤村は下を向いたまま言葉を詰まらせた
黒尾
「何かあったのか?」
澤村
「…………インターハイで俺達が青城に負けた時
アイツが自分の手をハサミで突き立てようとしてたんだ
寸でのところで止めに入ったから何もなくて済んだけど………」
黒尾
「………アイツ
ストレスに弱いんだよ
我慢強いけど、ストレスに弱えんだ」
澤村
「……………」
俺は澤村を外へ促した
ドア前の段差に男二人腰を下ろす
外灯が俺達の影を落とす
黒尾
「アイツが………
中学1年の時だった」