第46章 デンジャラス アウェイ
蛍には言ってない、インハイ予選決勝戦の日のあの後のこと
踵を返しそこから去った私は、歩いて烏野高校に向かっていた
地面を見つめながら、白いイヤホンを耳に指しながら
ポン、と肩に手が置かれびっくりして振り返る
と、すぐ目の前には焦ったような、びっくりしたような、もしかしたら笑顔なのかもしれない、そんな顔した及川
及川
「え!?ちょ、だいじょぶ!?」
あ、慌てていたみたいだ
視界がぼやけていて、彼の顔がはっきり分からない
はい、と差し出されたのはハンカチではなくて、彼が着ているジャージの袖
頭にハテナマークを飛ばせていると、及川は優しく目元を自分のジャージの袖で拭ってきた
突然の出来事に、一歩後ずさってしまう
葵
「…………すみません」
及川
「いいよいいよ
びっくりしたよね」
長い沈黙
私と及川の間には人が1人入れるスペースがある
でも、その間にある空気は異様な存在を放ち余計に気まずくさせた
及川
「その、………ごめん」
葵
「なにがですか」
及川
「牛若に………負けた」
葵
「皆のところに居なくていいんですか?」
彼の顔は地面と平行で、彼よりは背の低い私でも彼のつむじが見えた
葵
「いつもヘラヘラしてるあなたがそんな顔していたら、皆喜びますよ?
あ、でも岩泉?さんは心配してくれるかもしれませんね」
及川
「そんなこと……ないよ」
目元を赤くしながらポロポロと涙を流す及川