第44章 ファイナルセット
葵の主治医side
連日朝早くから晩の遅くまで起きて、さすがに疲労が溜まりに溜まったせいか、携帯のアラーム音が聞こえないほど眠ってしまった
時計を見れば、試合なんてとうの前に始まっているだろう
もしかしたら今頃は勝敗が決まっているかもしれない
しかし、だからといって行かないわけにはいかない
タクシーに乗って仙台市体育館へと向かった
中から聞こえる大きな歓声
その観客席の扉を開けば、一層大きな歓声と熱が自分を取り巻く
コートには、黒いユニフォームと白いユニフォーム
まだ、戦いが終わってないのが一目でわかる
一番コートが見えるところまで行くと、どうやら観戦に来たらしい男性2人が砂利を入れたペットボトルを振り回して歓喜していた
自分の存在に気づいた彼らは、「あなたも烏野の応援に?」と尋ねてきた
「ええ、まあ」と答えると髪色の明るい人が「今、烏野ノッてるんですよ!さっきもあの髪色の明るいちびちゃんがブロードして、その上ロン毛兄ちゃんがパイプをキメたところなんだよ!」と興奮気味に言う
バレーに関しては無知な自分は、親切に近況を説明してくれる彼に「はぁ。」と答えるしかできなかった
"ちびちゃん"のワードで反応したがどうやら烏野にはもう一人あの子の他にちびちゃんが居るらしく少し胸を下ろす
ここからでは背の高さがはっきりしない
「あの、誰か探しているんですか?」と黒髪の彼に聞かれ「ええ」と答える
「息子さん?何ていう名字?」と尋ねられ「息子じゃないんですけど…… 津田っていう子なんですが……」と言うと、ああ!と2人して声を揃え見あわしている
それなら、と髪色の明るい人が「あの髪色の明るいちびちゃんの後ろにいますよ」と言った
ああ、やっぱり出ているかと肩を落として、教えてくれた彼らに「ありがとうございます」と言った