第34章 第一試合、始まります
青葉城西高校side
入畑
「もう一回 見ておかないとな
烏野1年コンビのあの強烈な速攻」
ハイ、と隣で返事をするコーチ
そういえば、と言うふうに監督の入畑は問いた
入畑
「? 及川どうした?」
部員全員が集まっているというのに、肝心の主将がいない
部員の一人が「エ"」と声をあげ気まずそうに「えーーーっと……」と言いながら目をそらす
コーチが「なんだ」と急かすと
「外で……
他校の女子に捕まってます……」
と答えた
監督、コーチとも黙ってしまう
またか……
入畑
「……岩泉」
岩泉
「ハイ」
毎度のように、岩泉は「ハイ」と眉間にしわを寄せて始動していく
この青葉城西において、もっとも哀れなのは岩泉なのかもしれない
岩泉は、右手にバレーボールを掴んで主将を迎えに行く
会場の入口付近に、女子の群がりとその中央にたつソイツ
岩泉のボールを掴む力が一層強くなる
そして、それをキャプテンである及川の頭へクリーンヒットさせた
女子の悲鳴がたちまちあがる
「痛ーーー
監督にもぶたれたことないのにっ」
と涙目で頭を抑えながら振り向いた及川の顔はすぐに引きつった
及川
「!」
岩泉
「(くいっ)」
無言で頭を少し後方に振り
「何してんだ
行くぞクソ川」
とでも言ってそうな顔の岩泉
及川は、この男には太刀打ちできない
そして、この厄介な主将を唯一黙らせることが出来るのは
おそらく青葉城西の中で、岩泉
彼ただひとりだけであろう