第2章 姉と弟
母がスネイプ家の長男であり私の弟となる男児を出産して一週間の今日、母と弟は隣町の病院を退院する。
私と父は隣町の病院まで2人を迎えに行く予定だ。
父とお揃いでお気に入りのマフラーと手袋をつけたまま父の運転する車の後部座席に座り窓の外を流れていく景色を見ていたけれど私達の暮らす町、スピナーズエンドを出ると後は緑の景色が続くばかりで直ぐに飽きてしまった。
20分程走らせると緑ばかりだった景色に徐々に民家が混ざりだし、病院に着く頃にはレンガの建物がずらりと並ぶようになっていた。
一週間前に来た時は雪で白い印象だったこの町は、意外と色の溢れた素敵な町だったみたいだ。
しかし、そんな町の中でこの病院だけは今日も白を纏い私達を出迎えた。
車から父に抱きかかえられて院内へ入れば、やはり病院独特の薬品の匂いがした。
「こんにちは」
にっこりと笑って私達の方へ近づいてきた女性の看護師さんは続けて「奥様と息子さんの準備は済んでますよ」というと、クルリと身体を反転させ歩き出し、父が後を追うように歩き出したのを感じて、しがみ付く様に父の服を握った。
「スネイプさん、お迎えですよ」
「どうぞ」と了承の言葉を聞いて開けられた扉の先には母とその腕に抱えられた弟がおり、父は私を降ろすと黒い大きなバッグを肩にかけて私の右手を取った。
「それじゃあ、帰ろう」
母がベッドから立ち上がると「大変お世話になりました」と両親は軽く頭を下げたので私も慌て真似てみたが何故か大人達には笑われてしまった。
正面玄関前でもう一度、礼を述べた両親だが私は真似をしなかった。
それは、勿論笑われたくなかったからだが…そんな私に気がついた看護師さんは「バイバイ」と笑顔で手を振ってくれたので私も「バイバーイ」と笑って手を振り車へと乗り込んだのだった。