【黒子のバスケ】お手をどうぞ、お姫様【裏*18禁】
第47章 *切ない試練【黄瀬涼太】*
さんside
どうして涼太は私を抱きしめるの……。
他の子に逃げたんでしょ?
私じゃダメなんでしょ?
私の気も知らないでこんな事しないで欲しい。
期待させないで……腕回したくなるから……。
「いい加減にしてよ!」
「嫌っス!っち、話を聞いて」
「聞きたくない!」
ごめんなさい……。
私が抵抗するのは意地みたいなもの。
こっちがまだ好きでいたって、相手もそうだとは限らない。
それに流されたくなかった。
軽い女だと思われたくなかった。
話くらい聞いてあげればいいのに……というか聞いてあげるべきなのにそれが出来ない。
あの時も私は涼太の話を聞かなかった。
もしちゃんと聞いていたら……何か変わっていただろうか。
「じゃあこのままでいいっス…!オレっちに謝りたいんスよ!」
「今更いらないよそんなの!」
「あの日オレは嘘ついたんスよ…!本当は他の子になんか逃げてない!っちがすげぇ怒ってて……それでこっちまでムキになっただけっス!キスはされたんスよ!オレからじゃない!」
「っ……」
真剣に話してくれる涼太。
その目はもう嘘をついていない。
けど素直に受け止めるなんて私には出来なかった。
全ては自分が悪いって分かってしまったから。
私が取り乱して話を聞かなかったからこんな事になってしまった。
やっぱり変わってたんだ、あの時耳を傾けていれば。
「……もういい。涼太は何も悪くない」
「でも!」
「全部……私のせいだ…っ」
「あ…!待ってっち!」
〝ごめんね〟
そのたった一言を言えない私は逃げ出した。
嗚咽を堪えながらひたすら夜の街を走る。
謝る唯一のチャンスを自ら放棄した私には逃げ道はない。
苦しくて……前が見えなくて……
胸が痛い……。