第7章 こんな気持ち分かって欲しいのだから
Satoshi-side
ゆいは「さとし、」
「ゆいは」
ゆいは「さとし、」
「…ゆいは、」
ゆいはが、何度も何度も
おいらの名前を呼ぶ。
ゆいは「さとし、」
「…………」
でも、
ゆいは「さとし、」
「ゆいは!!」
ビクッとして、
ゆいはの目がやっとおいらに向いた。
ゆいは「……大野?」
ねぇ、ゆいは、
ゆいはは誰をおもってんの?
ゆいは「…………」
ボーっとどこかを見ているゆいはの、
こんな、
こんな恋に満ちた表情に
ドクンとはねる胸は
それがおいらへのもんじゃないって
気づいた瞬間に
あーそうだったのかって。
初めて、ゆいはが俺の名前を呼んだのは
俺じゃない誰かをみつめてて。
うぬぼれてたのかな。
おいらを見つけて飛び付いてきたり
キスしたら真っ赤な顔になったり
おいらのために泣いたり
少なくとも、ゆいはの中で
ちょっとは特別になれてんのかなって
全部、勘違いだった。
ゆいはにはもう、
特別な人がいたんだ。